紘二朗黒糖 誕生秘話 その6二朗さんはついに後継者として認められました。
黒糖作りの胆は窯焚きです。岡田さんは「窯焚き三年」とよくおっしゃいます。サトウキビを絞った搾汁は弱酸性。
それを中和するために水酸化カルシウムを入れますが、どの程度の量を入れるのか、適量を見極めるのが難しいのです。
「計器に頼るな、勘を信じろ」
岡田さんはくり返し杉俣さんにいったそうです。
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「搾り汁の緑がだんだん濃くなる。 茶碗にすくって、ガジュマルの葉のような色になったらよし」。
ガジュマルの葉は、濃い緑色です。
サトウキビ汁を大きなステンレス鍋で煮詰め、黒糖液を仕上げる頃合いは、鍋に差し込んだ大きなヘラから滴り落ちる黒糖の糸の引き具合で確かめます。 温度計で測っていては間に合わないのです。
こうして師匠からすべてを学んで免許皆伝、杉俣さんは独立しました。
今では黒糖作りの第一人者です。
彼から名前をつけてくださいといわれました。
その努力の結晶に、私は迷わずに
「紘二朗黒糖」という名前をつけました。
彼の名前を刻みたいと思ったからです。
それ以来、私たちは杉俣さんの黒糖を分けてもらっています。
はじめのうちは買い手がつかず、6トンの黒糖をうちの会が全部引き受けました。
倉庫いっぱいに黒糖が積まれ、売るのが大変でした。
でも、私は杉俣さんがここまできた経緯を知っています。きっかけも私です。
引き受けずにはいられません。杉俣さんの黒糖、この本物の黒糖を広めることが私のお役目だと思いました。
二年、三年と年を追うごとに人気が出て、杉俣さん自身にもほかからの引き合いが来るようになり、最近では、私たちの会の量を確保するのも厳しい状態になりました。
あれから一何年年。彼も40歳。二児のお父さんです。
余談ですが、
ところがふと見まわせば、 キビの栽培からいくつものステップを経てようやくできる黒
糖と、ザラメと廃蜜から仕上げた黒糖とが、同じ黒糖として売られています。
私はそのことに不信を抱き、消費者庁に不服を申し立て、一年後受理され、以来、分別されるように現在、スーパーやネット通販などで売られているのは、「黒糖」と「加工黒糖」と二つ
あります。
①サトウキビの搾り汁だけを煮詰めて固めたもの。これが黒糖です。
②工程の効率化のために、ザラメを加えたり、廃蜜を混ぜたもの。これが加工黒糖です。
消費者の目からほとんど区別がつかないという理由で、ただ黒く見えることで「黒糖」と名乗るケースもあり、混然となっていたのが、ようやく分別されるようになりました。
そうして私は気がつきました。
本物の生産物を作る人をあと押しするのも、私のするべきことだと。
本物の生産物を作ろうと思いながら、環境がそれを許さず悩んでいる人もいるでしょう。そういう人と出会い、私にできるささやかな力づけをすることも私の役目なのです。
長くんりましたが、読んでいただきありがとうございました。
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