紘二朗黒糖 誕生秘話 その1
紘二朗糖の誕生を語るために、まず”黒糖”に拘ると決めた当初のことを振り返ることになります。
BOOCS法から黒糖へ
旅行会社を経営している知り合いから連絡がありました。
九州大学健康科学センターの藤野武彦助教授(当時)が私たち「食の情報センター」が発行している『FAME・データポケット』という小冊子を見て、「この雑誌を欲しいんだけど、東京で買える?」とお尋ねになったそうです。
そんな縁でお会いしたのが1992年のことです。
お目にかかってお話をお聞きすると、人はなぜ病気になるのかという原理論から始まり、一番厄介なのは生活習慣病だと、次から次へと面白いお話が飛び出します。
すっかりファンになり、 藤野先生の講演会によく行くようになりました。 そのお話のひとつに、ユニークな健康方法がありました。のちに「BOOCSダイエット」と名づけられた痩身メソッドです。何がユニークかというと、脳の疲労を解消することで健康体になり、肥満傾向の人は自然に痩せていく、というのです。
先生によると、現代人の脳は常にストレスにさらされていて、それが原因で体に変調をきたしている。つまり、最大の原因は、脳の疲れによるという理論です。脳が疲れると、食欲中枢に異常をきたして、その結果、食べても食べても満足できず、肥満になってしまう。それが病気を引き起こす。 「それを止めるには、脳の疲れを解消してリラックスさせることだ」と。
そのために何はともあれ、心地よいことをする。たとえば一日一回は大好きなものを心いくまで食べる、つまり快食するというのが、一番簡単な方法だとおっしゃいます。
何かお手伝いできることはないかと、まずは自分たちの会員に伝えるため、私は「ブックス情報センター」を立ち上げ、 東京での連絡所を買って出ました。
BOOCSダイエットには良質の黒糖が必要です。 脳の栄養として糖分は欠かせないからです。
しかし、純粋な白砂糖や果糖では一気に体に吸収され、その結果、血糖値を急激に上げることになります。それでは体にダメージを与え、その状態が続くと糖尿病の原因となることもあります。
そこでミネラルやビタミンの豊富な、昔ながらの黒糖が必要になりました。
調べてみると、市場に出回っている黒糖にはニセモノが多く、短時間で作るため、ザラメを加えたり、色を付けるためにアクを焦がしたりして製造されていることがわかりました。
伝統的製法を守りつづけている黒糖の作り手はもういないのかとあきらめかけたとき、鹿児島県奄美諸島の喜界島で黒糖作りをしている人がいるとわかりました。
すぐに喜界島へと飛び、島村克広さんにお目にかかりました。
しかし残念なことに、「もうすぐ黒糖作りをやめるつもりだ。あなたたちのような人にもっと早く会いたかった。
でも、一人だけ古式の黒糖作りをしている人間がいる。うんというかどうか、わからないがね」と、それまでの苦労話を聞かせてくれました。
なるほど昔のままの製法では、時間と手間がかります。しかもその価値をわかる消費者はほとんどいません。いつしか生産現場でも、そんな作り方をする人間はいなくなってしまいました。買う側も、それが即席のニセモノ黒糖か古式製法による本物の黒糖かなど知らず、また知ろうともしません。十一本の割そうしてご紹介されたのが、古式製法を頑固に守っている作り手が、岡田忠二さんでした。