新潟の味噌「雪の花」
新潟県上越市の杉田味噌屋さん。 ここのお味噌が「雪の花」。創業は江戸時代、文政三年というから西版では一八二〇年です。麹造りから始め、のちに味噌も造るようになったという老舗中の老舗です。 このお味噌をまずいといった人は一人もいません。 味噌蔵の壁面や空中を漂う菌がうまい味噌を造っているといわれています。
「食べものから歩き出す会」がスタートしたころ、自分たちで味噌を造ってみようと、そ の道の先生をお招きし、みんなで造ってみました。 一度にたくさん造って、同じように包 んで、家に持ち帰って、それぞれの家で保存し、熟成するころに取り出して食べてみると、 なぜか、それぞれ違う味になっています。
つまり、家庭ごとのわずかな環境の違いや、そ こにどんな菌がいるかなどによって、お味噌の味は変わるのでした。大きな教訓でした。 素人がいくらがんばってお味噌を造っても、おいしいものができるとは限りません。手間暇かけてせっかく造ったお味噌も、必ずしもおいしいとはいってもらえないのです。
原材料は吟味に吟味を重ねているのに、悦に入っているのは自分たちだけ。まさに手前味噌ね…苦笑する仲間たち。
お味噌教室を開くたびに、参加者が減っていきました。お豆がゴロゴロ入っているからダメなんじゃない? あたり鉢であたって味噌漉しで漉せば甘くなるのかなぁ。 米の味が出て甘くなったらおいしくなる? いろいろやってみましたが、どうもうまくいきません。
安定的においしいお味噌を造るとなると、いつも同じ味の味噌ができる環境が必要だと気がつきました。
それが味噌蔵です。味噌蔵の壁についている菌や温度、湿度などが お味噌の熟成に影響するのです。
都会のコンクリートの室内では、安定した発酵を保ち、同じ味を造り出すのは難しいとわかりました。 やっぱり味噌は味噌屋です。 新潟のお味噌「雪の花」を紹介していただいて以来、ずっと「雪の花」を仕入れつづけています。
なにしろ創業文政です。 二百年間、壁に菌が生きつづけ、味を守っているのでしょう。おいしくないわけがありません。 とても人気があり、月に五〇キロくらい注文が入ります。