神野さんの納豆と、もろみ納豆
納豆は、日本が世界に誇る発酵食品であり健康食品です。私たちの会で配る納豆を作っているのは福島県福島市の神野学さん。 自動車部品工場の社長さんですが、納豆大好き人です。 しかし「どうも自分の口に合うものがない。一番いやなのは固い豆が入っていること」といつもこぼしていました。 この不満が、神野さんを納豆作りへと駆り立てました。
自分で豆を仕込み、自分の手で最高の納豆を作ると宣言しました。 ついては工業用の逆浸透膜(RO膜)浄水器を使いたいということがきっかけで、神野さんと出会いました。
今から一五年ほど前のことです。神野さんは、「浸透力の強い水で豆を浸す以外に、すべての豆をふっくら柔らかく仕上げる方法はない」といいます。
神野さんは業務用の大きい逆浸透膜浄水器を設置しました。浅田康子さんご紹介の浄水器ハイドロピュアの業務用です。 水が一万分の一ミリほどの微細孔を通り抜けるため、クラスターが極微粒になり、瞬時に豆の内部に浸透します。 神野さんはこれを使って納豆を作っています。豆へのこだわりも強く、私も北海道に大豆を探しに行くお手伝いをしました。
神野社長によると、「すず姫」という豆が一番納豆に合っているそうです。
しかし収量が悪く、当時誰も作っていませんでした。 そこで、よつ葉牛乳を通じて親しくなった帯広市役所の担当者に「すず姫を生産してくださる方はいませんか?」と聞いてみたところ、栽培してくれる方をご紹介くださいました。
横山明美さんです。その後この豆の需要が増え、生産してくれる生産者を募ったことで、今では生産組合もできました。
神野社長は、納豆好きにことよせて、定年退職する人たちのために第二の職場作りを考えていたようです。 東日本大震災 (二〇一一年三月)での原発事故に際しては、避難解除されるとすぐに納豆工場に最新の浄化施設を導入し、徹底した衛生管理の下、いち早く操業を再開します。住民が戻っても、働く場所がなくては生活が成り立たないからです。
納豆工場の操業再開は新聞各紙で報道され、多くの人が心打たれました。
ところで、私の郷里甲府では昔からあまり納豆を食べる習慣がありませんでした。
だから東京に出てきても、納豆が苦手でした。
どうしたらおいしく食べられるかに悩んでいたときに、北九州の料理研究家、高畑康子先生から教えていただいたのがもろみ納豆です。 麦を発酵させた「麦麹」を高畑先生にお願いして手に入れ、神野さんの納豆に、この麦麹を混ぜ、さらに醤油、みりん、お酒、「がごめ昆布」を細く切ったものを加えて完成です。 がごめ昆布は函館近辺で採れるねばりやとろみの強い昆布。食べるときに有精卵の黄身を落としてよく混ぜてご飯にかけたり、山芋を混ぜたりすると、もうほかのおかずはいりません。以来、わが家の常備品となり、大の納豆ファンになりました。
高畑先生は私と同い年。私が尊敬してやまない親友です。
彼女は三人姉弟の長女。病弱の母に代わって中学生のころから家族の食事を作り、ご近所の祝儀・不祝儀の席にも駆り出され、その手さばき、動きは並みいる大人たちを感嘆させたという筋金入りの料理人、 栄養管理士です。
伝統的な日本料理にこだわり、砂糖や油まみれの現代の食事から、それらなしでもこんなにおいしいものができますと、全国の皆さんに伝え歩いています。
手間暇を惜しまず、なりふりかまわずのその熱意には感動せずにはいられません。