神楽坂123青木さんの四季折々つれづれ食材コラム

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完全無農薬米を求めて

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完全無農薬米を求めて

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最初私たちに安心安全なお米を提供してくださったのは、秋田県大潟村の早津勘一郎さ んでした。銘柄は「ササニシキ」です。早津さんはそのころ誕生したばかりの「有機農業 いちらくてお 研究会」の会員で、会長の一楽照雄先生のご紹介で知り合いました。

秋田県大潟村といえば、押しも押されもせぬ米どころです。昭和三二 (一九五七)年、米不足解消のために八郎潟の干拓事業が開始され、昭和三九(一九六四)年に大潟村が誕生しました。しかしその後、米が余るようになってしまいます。政府は減反政策を打ち出し、米の作付面積の削減を要求しました。大潟村も例外ではありません。米作りのために作られた村で、米が作れなくなったのです。

この減反の背景には、昭和一七(一九四二)年に施行された食糧管理法が関係していま す。これは、戦争中の食糧の安定供給を目的として、農家の作る米を国が全部買い取るという法律です。しかし、米が余るようになるとすべて買い取っていたのでは負担が大きすぎるので、補助金を出す代わりに、米の作付けを制限する減反政策が採用されました。 私たちが大潟村の米の販売を始めたのは昭和五三 (一九七八)年ごろです。 大潟村の早津 勘一郎さんの完全無農薬米ササニシキを産地直送米として取り扱いを始めました。 なぜかというと、早津さんの考え方にすっかり感動したからです。 田んぼを見にご一緒したとき、早津さんはこういいました。

「作物は足音で育つもの。そう思っているから、用事がなくても毎日田んぼに出かけて、 自分がいることを伝えます。だから同じ米を作っても、人によってまったく違う米ができますよ」

この言葉を聞いて、懐かしい思い出がよみがえりました。 私の父も母も小作さんも(ときには私も)田畑の作物を見て回り、育ち具合をたしかめながら足音を作物に聞かせていたのです。 早津さんのその言葉を聞いて、「まだこんな方がいたのか。この人のお米を食べたい」と思いました。

食べものは空腹を満たすだけの「餌」ではありません。 食べたものが体と心に作用して、エネルギーに転換していくものです。 だから、できた農作物だけでなく、作る人の心がとても大切だと思っています。

ところがお米についてはひとつ問題がありました。私たちのグループが自前で産直すると、当時はまだ食糧管理法が存在していて (一九九五年に廃止)、ヤミ米として摘発される可能性があったのです。早津さんを犯罪者にするわけにはいきません。 お金がかかってもいいからと、正規のルートである食糧管理制度を通して取り寄せることにしました。

早津さんのお米は減反していないという理由で反則金と食管経費が課せられ、通常の倍に近い値段になってしまいました。 それでも私たちは早津さんのお米を食べたい、 共に 減反反対運動を闘おうと思いました。価格の高いお米でしたが、多くの仲間たちに丁寧に説明し、紹介してきました。

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